上天草市・湯島 「フカ狩り」 - その1

 熊本県は上天草市・湯島で、大正時代から続く伝統の「フカ(サメ)狩り」が6月8日から始まりました。今回は上天草市観光協会が企画する見学ツアーに初参加しました。

 湯島、それは熊本県と長崎県・島原の中間地点、有明海に浮かぶ、人口は450人ほどの小さな島で、漁業が盛んです。

 湯島までは船で行きます。上天草市の江樋戸港・鳩の釜港からの定期船に乗る必要があります。今回は駐車場の関係で、江樋戸港から1キロほど先の鳩の釜港から乗船しました。片道600円。
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 いざ鳩の釜港を出港。
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 湯島までは30分もかからないくらいの船旅です。

 湯島港は小さな島の割には立派な桟橋が整っています。港に定期船が着くと、旅館の方などが大勢出迎えに来てくださっていました。旅館の方はテキパキと私たちの荷物を一輪車に載せるとそのまま運んで行ってしまいました。湯島内の旅館は4軒、東部に「きく」、定期船の船着き場の真ん前に「月見荘」、西部に「日の出荘」、月見荘と日の出荘の間に「有明荘」が位置しています。
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 この島で荷物を運ぶものは専ら一輪車とたくさんのバイク。車は短い滞在期間中1度だけ軽トラを見たのみです。島内には公共交通機関も、信号もありません。そして生活に欠かせないバイクには必ずと言っていいほど大きな荷台が付いており、こんな大きなものも運びます。吃驚しました。そしてほとんどの人がノー○○。さらに吃驚。
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 この建物は港で綺麗さの点で目立っていました。そう、交番。・・・ではなくて、船の待合所兼公衆トイレ。昨年できたばかりだとか。
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 ちなみに島内には交番もなければ、警察官もいません。(だからノー○○・・・、納得)。郵便局、JA、漁協、支所はありました。学校は湯島小中学校があります。そう、「小中学校」です。子どもたちと会話すると非常に素直で、この学校には小学生10人、中学生13人がいるということでした。



 これは島唯一の診療所。ちなみに歯科診療は月のうち診療日が決まっていました。
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 港で手ぶらになった後、希望する人は島内観光に案内してもらえました。ボランティアガイド付きの徒歩による散策です。港から西のほうに海岸沿いに歩いて行きました。

 しばらく歩くとまず右手の斜面に見えてくるのは「一ちょ墓」。その昔、長崎県・雲仙普賢岳が爆発を起こした時に大津波が起き、多数の人の遺体が湯島の西海岸に流れ着いたそうです。その慰霊のため。

 さらに歩いて行くと、右手に登山道が出てきます。そこを登って間もなく見えてきたのは湯島の灯台。
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 山の上には、その道沿いに小さな畑が何枚もありました。どこも雨水をためる設備があります。要らなくなったバスタブだったり、土を掘ってビニールを張ったものだったりいろいろ。その中でオタマジャクシが泳いでいます。この湯島は「湯島大根」の産地でもあります。今は時期外れですが、冬の時期にはこの畑で湯島大根を栽培するんでしょうね。

 山道を登りつめると公園が現れました。今でこそこの頂上(標高100m強)は木々で見通しが悪くなっていますが、江戸時代、島原・天草の戦いで、天草四郎たちがここで話し合いをしたようです。そのため湯島を別名「談合嶋」と呼びます。ここには船で近付く者を監視したとされる遠見塚やキリシタン大名の親族の墓や切支丹墓碑がありました。(ちなみに、ここから下った神社の境内には、戦いの際に武器を作るために用いたとされる鍛冶水盤なども残されています)。
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 帰りは集落の中に直接下りてくる急な坂道でした。距離的には早く頂上と往復できる道でしょうが、ここから登ったのでは確かにしんどい。しかし、この急坂を地元の人はバイクで登って行くらしい。この湯島の集落には亜熱帯で咲くブーゲンビリアやハイビスカスなどが路地植えされています。この地が暖かい土地だと分かります。道を歩きながら、庭先にいる地元のおじいちゃんやおばあちゃんと気軽にあいさつできます。
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 港に戻ると解散。各自で宿に向かいます。今回は、乗船からここまで、地元のテレビ局RKKのタレント「KあんどK」こと山内かなめ・かめきちさんとその撮影班とご一緒でした。


 私たちが泊ったのは、西海岸にある「日の出荘」、島内で一番大きい旅館です。
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 晴れているならば素晴らしい夕陽を見ることができたようですが、この日はあいにくの曇り。部屋からは海が見えます。この季節、涼しい心地よい風が部屋を通り抜け、昼間の疲れもあって眠気を誘います。
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 湯島には温泉がありません。島なので水に不足しているのかと思いきや、地下水が湧き出しているようで、水不足はないそう。
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 食事はこの旅館に泊まるツアー参加者が大広間に集まって合同でいただきました。家族単位で食べるものとばかり思っていたので面喰いましたが、それはそれでツアー参加者が互いに知り合い、仲良くなれて良かったと思います。参加者のうちここには子どもを含めて12名が宿泊しました。料理はもちろん海の幸ばかりです。ヒラメの刺身、ガラガブ(カサゴ)の煮つけなどなど。
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 明日は早朝からフカ狩り見学です。波の音を聞きながら早めに休みました。

その2に続く

上天草市・湯島 「フカ狩り」 -その2

 湯島沖はタイの一本釣りが盛んです。糸を手繰ってタイを引き寄せますが、その途中でサメがタイを食べてしまうということです。それで大正時代からこの時期にサメを捕獲するようになりました。



 いよいよフカ狩り当日。まだ夜明け前。前日、朝5時10分に旅館を出発するよう指示があったので、4時30分に起床しました。港の方角からもすでになにやら音が聞こえてきます。そして、ひときわ船のエンジンがうなる音が聞こえてきたので、部屋から海を見ると、クレーンのついた大きな船が出港していました。時刻は4時50分を回っていました。あとで気づくのですが、この船こそ今日フカ狩りをする県水産研究センターの調査船「ひのくに」(49t)です。
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 出発は午前5時30分。船の上から日の出を眺めました。
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 前日からハモやアナゴを餌にしたはえ縄を入れてある海域は、湯島の東です。すでにフカ狩りは始まっていました。潮風は冷たくはなく、心地よいほどですが、長時間あたるので長袖は必須、可能ならその上にもう一枚着たほうがいいでしょう。
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 右隅に見える船は報道陣の船。私たちツアー客と一緒にタレントの「KあんどK」(山内要&かめきち)が乗っているんですが、すかさず要さんが報道陣の船にこたえています。このシーン、他局でも夕方のニュースで報道されてました。
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 だだっ広い海です。まだ海をパノラマで撮る余裕があります。
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 というのも、待てども待てどもフカ(サメ)は“上がらない”のです。たまに小さいのが上がったりするのですが、船の上のテンションも“上がりません”。船上の人同士、“全然獲れんね”、“サメが上がらない時もあるらしいよ”、“昨年かなり獲れたから今年は…”とかなんとか話しています。
 しかし、ついに6時24分動きがありました。初めて大きなサメが上がったのです。船の上のテンションも上がりました。シュモクザメ(ハンマーヘッドシャーク)です。しかし、すでに海の中で力尽きて死んでいるものでした。

 その後6時半を回った頃から次々にサメが上がり始めました。生きているサメもいます。銛(もり)を打ちこみます。
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 丁字型の頭部が波間から見えます。サメを船の後部に寄せ、その頭部にひもをかけます。
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 そしてクレーンで釣り上げます。やはり人力では無理。人の背丈よりはるかに長い。
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 持ち上げる時も体をくねらせて抵抗します。
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 船に取り込んでからも暴れるようで、船上で大きな木槌を取り出す場面もありました。それはそれは迫力のある漁でした。
 今回上がったサメは全部で9頭。3メートル、200キロ以上の重さがあるものもいたようです。

 ただ、針にかかったすべてのサメを引き上げられるわけではありません。途中でばらしてしまうのを2度見ました。大型になるほど糸を食いちぎる力も強くなり、体重も300キロを越えるようです。

 恐るべしフカ。こんなのが有明海にも生息するというのがすごい。

 今回いつも一緒にいた感のある山内要さんとかめきちさん。こちらではよく知られているので、そのまま顔だしでもいいでしょうね。お二人はサメがかかっているのが分かると、絶秒なトークで盛り上げてくださいました。ただ時折仕事を忘れていちツアー客となって固唾を飲んで見ているので、撮影スタッフの方に仕事!と突っ込まれることも(笑)。
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 はえ縄をすべて引き揚げてしまう7時30分頃まで見学し、8時前には湯島に帰港しました。港では旅館の方々、地元の方々、小中学生が大勢で歓迎してくれました。上陸すると地元の方がちょうどサメの刺身を作っている最中でした。漁の途中でサメを受け取りに来た漁船が持ち帰ったものです。こういうものはこの場でないと食べられません。
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 しばらくすると調査船「ひのくに」も戻ってきました。そして次から次にサメを陸揚げしていきます。人々の熱気も最高潮。間近で見るシュモクザメはやはり大きいです。歯を切り取ってあります。この熱気あふれる場を撮影しようと大勢の報道陣もつめかけます。
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 桟橋に降ろされて間もなく解体が始まりました。早速サメ肉を取る人。
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 長崎大学の先生と学生たちは、学術調査目的でどんどん解体していきます。
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 この年配の男性はサメの尻尾の部分の肉を取っています。サメの肉はくせがあり、よく動かしている尻尾部分の肉が一番おいしいそうです。
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 この女性、長崎大学の准教授と他の方からお聞きしました。率先して実に手際よくお腹を開いて、調べるべき臓器とそうでないものを分けていかれます。とてもかっこよかった。
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 湯島の小学生たちはサメが降ろされた当初こそやや怖そうにしていましたが、見慣れた後は実にたくましい行動に出ます。サメのまだ動いている心臓を手にとって持ち上げてみたり、サメのお腹に入っていた仔を見せて回ったり、今時珍しい最高に素晴らしい子どもたちです。
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 私もサメに触れてみましたが、皮膚は鱗があるように見えず、とても柔らかでした。ただ表面を撫でてみると明らかに触感が違います。サメの皮膚の上で頭から尻尾のほうに指を滑らすとつるっとした感覚なのですが、逆に尻尾から頭のほうに指を滑らそうとしても強い抵抗を受けます。いわゆるこれが“サメ肌”でしょうか。

 私はこの滅多に見られない光景に感動を覚え、朝食をとるのも忘れて見入っていました。


 旅館の方々が港で準備してくださった朝食。もうツアーのほとんどの人たちは終わっていました。 
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 サメは新鮮なうちは刺身で食べることができます。それは今、ここでしかできない調理法です。また、湯引きという方法で食べることもできます。臭みも少なくとても歯ごたえのある肉でした。
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 このツアーに参加する場合、サメの切り身を持ち帰るための(できれば大きめの)クーラーボックスを持参する必要があります。目指すは尾びれ近くのよく動かしている部分。
 私は何を持ち帰ったか?実はなにも持ち帰りませんでした。小型の入れ物しかもっていなかったのもありますが、解体現場の強い臭いを嗅いだら、もうどうでもよくなりました(笑)。でも来年以降また参加する機会があるなら、ぜひ自宅でも食してみたいと思います。大型のクーラーボックスが必需品です。
 持ち帰った切り身の調理方法は、生姜醤油に漬け込んで臭みを取り、カツにして食べるのが良いようです。



 このあと通詞島沖にいるイルカの群れを見に連れて行ってもらいました。そしてイルカ・ウォッチングから帰ってきたのは正午前。桟橋では、旅館に置いたままだった自分の荷物を、旅館の方がわざわざ持ってきてくださっていました。感謝です。観光協会の方と旅館の方に見送られて帰途に就きました。
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 興味のある方は、来年も今の時期また催されますので、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。上天草市のホームページで紹介されますし、フカ狩りという言葉で検索すると見つけられるでしょう。今年の申込締切は6月1日でした。
 今回は上天草市が市町村合併でできて初めてのフカ狩りだったので、PRが少し不足していたようです。ツアー参加者は40名ほど、例年よりかなり少なかったようです。
 しかし、このフカ狩り、とても楽しめます。離島の湯島の魅力も十分味わえます。人の温かいもてなしも味わえます。来年も参加しようかな。


 後日談;この日のフカ捕獲数は大小合わせて9頭、逃げたフカは7頭だったそうです。