アルジェリア人質事件に想う

 連日アルジェリアの天然ガス関連施設で起きた人質事件の報道がなされている。亡くなった方の遺体が帰国している映像を見て、また、残された家族の言いようのない深い悲しみと慟哭を見て、私自身も胸が締め付けられるような思いをもち、涙しそうになる。本当につらい。

 特に1年前に親父を亡くしてから、死について、自分の生き方について、以前より深くまた身近に考えるようになった。そのせいか最近そんな話題の本を何冊か読んでいる。


 最近深く心を動かされた本がこれ。

 「エンジェルフライト国際霊柩送還士」。2012年第10回開高健ノンフィクション賞を受賞している。
エンジェルフライト

 この本を通して初めて、海外で亡くなった方の遺体を日本に送還したり、日本で亡くなった外国の方の遺体をその故国に送還したりする仕事があるのを知った。そして読み終わった頃ちょうど、アルジェリアの事件が起こった。

 今回の遺体搬送にも、この本でその仕事が詳細に記されていた「エアハース・インターナショナル株式会社」が関係しているのではないかと思う。また、身元確認に長い時間がかかったことを考えると、遺体には相当損傷があったのではないかと推測される。

 だから、〔ご遺族に〕会わせられるようになんとかするんです。ひどい状態のままだとご家族は、現実を見ようとしなくなります。『これはあの子じゃない、違う人だ』と、そう思う。だから死を受け入れられるように、きちんと対面させてあげたい。お別れをさせてあげたいと思うんです。
(211頁より)



 この本の中では、海外で転落して亡くなった男性が羽田に戻ってきたときのエピソードが紹介されている。妻は現地で本人確認をしている。

 損傷の激しい遺体の修復過程の記述は実に生々しい。しかしその結末では実に不思議な安堵感に包まれる。

 顔の輪郭ができたところで、パスポートを横に置き、鼻の形、目の形、口の形を慎重に直していく。ワックスで均し、そこにファンデーションで色を載せていった。
 時間が逆に戻る。その人が、その人らしさを取り戻して穏やかに微笑んだのを利幸は見た。
<おかえりなさい。奥さんが待っていますよ>
 利幸は新しい棺に遺体を納めると、作業を終了した。

 遺族に遺体を送り届けに行く。柩を家に安置し、利幸は「ご確認ください」と柩の小窓を開けた。それを覗き込んだ途端、妻は「ああ・・・・・・」と叫ぶと、柩に取り付いて泣いた。
「ありがとうございます・・・・・・、あの人です。・・・・・・ありがとう・・・・・・」
 親族に対面させることなどできるはずがないとあきらめていた妻は、夫を親族に対面させた。みな大泣きをしていた。」
 妻は上がりがまちのところで正座をすると、頭を床にこすりつけるようにして何度も何度も礼を言った。
(213頁より)



 そもそも今回のアルジェリアのような悲惨な事件が起きなければいいのである。しかし現実には起きてしまった。まったく無力である。そして、ご遺族の愛する家族を突然に亡くした限りなく深い悲しみは、今の世界では決して癒されることがないであろう。でも、でも、せめて、ご遺体がきれいになって帰ってくることにより、ご遺族が死を受け入れられるようになることを切に願う。

 ふつう人はその両親が愛情を込め苦労して何十年もかけて育ててきたものだ。その命を別の人がいとも簡単に故意に奪ってしまう。親が存命ならどれほど嘆くであろう。最も若い人は29歳、私と同県人だそうだ。また、年老いた母親が先立った中年の息子の名を呼んで嘆き悲しむ。本当に理不尽だ。

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