引越ボランティア

 熊本地震から2か月が経ちました。

 先日私たち夫婦の友人がひとり、熊本から他県へ引っ越していきました。彼女とはもうかれこれ30年の交友があり、その間彼女は生活が一変するような辛い経験もし、今回熊本地震に遭遇しました。

 彼女が住んでいたアパートは一部損壊判定。外の柱には角材による応急処置の補強がなされ、それがかえって痛々しくて、辛い地震を毎日思い出させました。また、彼女が住んでいたある部屋の床は、丸いものが転がっていくほど傾いており、度重なる余震で、彼女自身は地震酔いの症状を常時訴え、身体的にも精神的にもかなり追い詰められていました。


 彼女は地震の影響のない場所への引っ越しを望んでいました。しかし、独り身で金銭的にも全く余裕がない身。


 しかし、それを聞きつけた仲間が彼女を支援することになり、トントン拍子で引越の話がまとまりました

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 引越先は隣県の某市。そちらで引越ボランティアを募り、15名の有志が手を挙げました。下は20代前半から、上は60代の主婦と思しき女性までの男女。彼らは地元でトラックをレンタルし、さらに軽トラックや自らの車を出して分乗。早朝に出発して、熊本にやって来てくれました。なおレンタカー代やガソリン代は、支援に行きたくても行けない方々からの義捐金


 今回私は熊本側の調整者のような立場。引越は荷物をただ運ぶだけではありません。荷物を梱包したり、各種届け出を出したり、不用品を処分したり、それらすべての作業に多くの有志が関わりました。地震で力を失った彼女のために、引越前にも多くの仲間が自発的に動いたのです。


 当初先方は、熊本側に「みなさんも被災者です。引越作業はこちらですべてできるような体制で向かいます」と言ってくださっていました。とはいえ引越当日、熊本側からも有志17名がぞくぞくと集結。そんな手弁当の大勢のボランティアの働きで、熊本での彼女の引越作業は午前中のうちに終了。彼女は笑顔で某市へと越していきました。


 引越先でも、ボランティアたちが搬入作業をしてくれたと聞いています。そして今後も彼女は助けを受ける必要があるでしょう。実際彼女が生活するアパートは、家主が1年間家賃無料で提供してくれたもの。今時こんな人がいるのです。しかもすぐ近くには、手話のできる人も住んでいます。そう、彼女はろう者。今回ひとりのろう者のために、手話のできるできないに関わらず、多くの人が動いてくれました。


 彼女は被災して苦しんだとはいえ、大いに恵まれていたと言えるかもしれません。世の中には、地震の影響で苦しんでいる人が多くいます。引っ越したくてもいろいろな理由でそうできない人々もいます。熊本地震から2ヶ月が経ち、外面の被害がそんなに大きくなかった場所では、多くの人は普通の生活に戻りつつあるように見えます。しかし実はものすごく心は疲れており傷ついています。
 例えて言うなら、前震と本震は2度大きな交通事故に遭ったようなものです。本来大きな交通事故に遭ったなら、安静にしなければならないはずですが、外面的にどうもなかった人たちは、すぐに日常の生活に追われ、安静にする余裕もありませんでした。無理をした結果、やがてそれが病気として現れたり、心の余裕を失わせて、何かのきっかけで人との付き合いにも影響を及ぼしていたりする場合があるようです。そのあたりの事情を汲み取り、心は確実に被災していることを理解し、優しく接するのは本当に大切だと最近特に感じています。
 かく言う私も一被災者ですが。

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