輪地焼き

 10月の目の回るような忙しさからやっと解放されて、少し余裕が出てきた11月です。



 阿蘇で野焼き関連のボランティアに参加してきました。春以来半年ぶりの活動です。今の時期は野焼きの準備をする大切な時期です。

 今日の作業は「輪地(わち)焼き」と言います。それは防火帯を完成させる作業です。

 順を追って説明しますと、9月頃から、春に野焼きをする場所の周囲に、幅10mほど帯状に青草を刈ります。防火帯になる部分の草刈りです。これを「輪地切り」と言います。まだ暑いのでかなりの重労働です。

 「輪地切り」で刈った草をしばらく放っておくと、当然枯れます。その枯草を焼いて防火帯を完成させるのが「輪地焼き」です。焼くのは周囲の草がまだ青い時期、ちょうど今頃です。防火帯の枯草だけが燃え、その両側のまだ青い草原に延焼していくことが少ないからです。(輪地焼きをしない場合もあります。)





 今回輪地焼きをするのは町古閑牧野(ぼくや)。ちょうど山の際に防火帯があります。特によく分かるのが、画像左、ジグザグに色が変わった部分。そこが輪地切りしてある部分、防火帯になる部分です。
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 今日は平日のため、ボランティアさんの数は少なめ。8人ほどでしょうか。若い女性の方が一名いらっしゃいました。まずは上の画像の右、というか、あまりに牧野が広大で、この画像には映っていない部分から、輪地焼きを始めます。

 私は消火用の水を入れたジェットシューターを背負い、さらに火消し棒を持つ、二刀流で作業することになりました。なお、前回の野焼きで使い物にならなくなった靴の代わりに、今回、長編み上げ安全靴を購入し、ちょっとおしゃれにかっこよく足元をきめてきました(笑)。



 今朝は今年一番の冷え込みだったので、牧野もかなり寒いのではないかと思っていました。作業着の下に長袖シャツと長袖下着を着て作業しました。ですが、火のそばでもあり、運動量が多いので、午前中だけでいずれもぐっしょりになるほど汗をかいてしまいました。ヘルメットの中も同様。1.5Lほど飲料水を持って行って正解でした。着替えもあった方がいいでしょう。
 この地の地形に加え、火消しという役柄上、煙にいぶされることが多く、野焼き由来のPM2.5もかなり吸い込んだのではないかと思います。私が大嫌いな紫煙よりましですが。



 11時頃の小休止の際に撮影。阿蘇の五岳が前方に広がります。眺めは最高。通常は絶対に見ることができない場所からの景色です。画像右下に白い物が見える辺りが集合場所。白い物は最初の画像にも写っている干し草ロールです。
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 午前の作業が終わって、昼食のため集合場所に戻ります。ススキの海原を進んでいきます。このとき野生のシカに出会いました。牛が通る道が等高線のように走り、結構段差がある草原の中を、シカは平気で走ることができます。人は足元に注意しながら進まなければならないのに。
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 午後からの作業は、二手に分かれての作業。私たちの班は、組合長と若い組合員の方、ボランティアリーダーに、比較的若いボランティアが加わった構成で、最初の画像にもあったあのジグザグの防火帯を焼くことになりました。実はあのジグザグ、転げ落ちそうなほどものすごい急傾斜です。

 まずそこまで、草原をかき分けながら、水を入れたジェットシューターを背負い、火消し棒を持って登って行きます。下から火をつければいいじゃないかって? そんなことしたら一気に火が駆け上がって猛火になります。ですから、まずてっぺんまで登って、上から火を入れるのです。
 かなり息が上がります。でもこれも体の訓練、マラソンにも役立つと思えばなんのその。

 そして到着した今日の最高地点。高い所はすでにきれいに紅葉していました。
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 残念ながらこの画像では急傾斜具合が伝わりません。ただこの坂を下った先が全く見えません。この場所、上から火を入れましたが、それでもその炎は凄まじいものがありました。
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 休憩時に撮影。
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 無事防火帯完成。


 ここまでで3時。本当はもう一か所作業が残っていたのですが、そこは牧野組合員とボランティア有志で行うことになりました。あと1時間はかかるようです。私は夜に仕事があるのでここでおいとまします。

 帰り際、牧野組合からボランティア一人一人に、ブドウ1パックとリンゴ1個のお土産が配られました。






 どこからこんなに汗が出てくるのだろうと思うくらい、一日もう汗だくで働きました。そしていただいたのは阿蘇市地域通貨500Grassと先ほどの果物。そう、仕事に見合った金銭的報酬がもらえるわけではありません。ボランティアですから当然です。でも、とてもとても爽やかなんですよね。人間にはそんな利益度外視の気持ちが植え込まれているようです。





 ここの牧野組合長さんは、よくマスコミにも登場なさる方で、昼食時もボランティアのところに自分から近づいて一緒に談笑しながら食べられます。恥ずかしがり屋の組合長さんが多い中では珍しいと思います。

 今、草原では蜘蛛(クモ)の飛行が見られます。ほら、そこにも飛んでいる!今、糸が見えたでしょ。糸を空中に出し、風に乗って飛んでいっているんです。
 そしてそれをトンボが狙うんです。さて、クモはどうやって逃れるでしょう?

 (糸を切って落下して逃れるんじゃ? でも、そうしたら下に落ちて死ぬよ。 軽いから死なないでしょ。 トンボの飛行術だと、クモが糸を切って下に落ちた瞬間に対応してトンボは捕まえるんじゃ?などといろいろ答えが出ます)

 答えは、トンボが近づいてきてクモを捕まえようとする瞬間、クモは別の糸を出します。するとそれがトンボに絡まって、トンボはそのクモを捕り損ないます。あんなに小さいのに知恵がありますねえ。見事に設計されていますね。・・・


 組合長さんの話によると、草原には“宝”があるそうです。野焼きに参加している間に気づきたいものです。

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